気をつけて!海外撮影でかかる8つの特殊費用

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海外撮影でかかる費用には、渡航費や宿泊費などが含まれ、当然、日本国内で撮影をするのに比べて出費がかさみます。

さらに諸外国では、撮影のルールが日本と違ったり、日本からの物理的な距離間が支障をきたしたりして、国内の撮影では発生しない費用を支払う必要が出てくることがあります。

本記事では、海外撮影、特に日本の撮影隊が頻繁に訪れるアメリカでの撮影に発生するかもしれない特殊な費用についてまとめてみました。

撮影の規模と内容によっては、バイパスできる項目もありますが、以下のリストを頭の片隅に置いておくと、予期せぬ見積もりに遭遇することを減らすことができるかもしれません。

1. ロケハンにかかる費用

テレビでもコマーシャルでもミュージックビデオでも、ロケハンは撮影をスムーズに進行させるためには非常に重要な準備ステップです。

しかし、海外でのロケとなると、ロケハンのためだけに出国するのは予算的になかなか難しいということもあるでしょう。

アメリカなどの国土が大きい国や、状況によっては、移動だけで複数日かかることもしばしばあるでしょう。

また、現地ではコーディネーターやガイドさんなど、日本からのクルー以外に人員が動くことも少なくありません。

海外ロケハンで発生し得る費用

  • 日本からの往復渡航費
  • レンタカー代、及ガソリン代
  • もっと遠い場合は、乗り換えの飛行機代+レンタカー代
  • 秘境などの場合、船やへりなど、さらに別の移動費
  • 日数分、人数分の宿泊費
  • 日数分のコーディネーター/ガイド費
  • 日数分、人数分の食費

これらの費用を少しでも削減するために、現地コーディネーターにロケハンを委託することも一つのオプションです。日本からの渡航を削ることで、現地までの移動費、現地でのクルーの人数及び出費を減らすことが可能です。

もちろんご自身でロケハンをするのと、誰かにお願いをしてロケハンをしてもらうのとでは、勝手が違って、自由度が低いかもしれませんが、経験豊富で、現地のことを知り尽くしているコーディネーターだったら、国内でのリサーチでは上がってこないような隠れスポットを紹介してくれるかもしれませんので、ぜひ活用してみてください。

そして現地コーディネーターにお願いする一番の利点は、ロケハンに裂かれるはずだった時間を他の仕込みや準備に当てることができるということではないでしょうか。

海外での移動距離の規模感やかかる時間に関しては、調べてもなかなか想像がつかないこともあります。プロダクションが最も効率よく進むために、ロケハンの有無や、日本からスタッフを送るかどうかを、現地のコーディネーターに一度問い合わせてみるのもいいでしょう。

2. 撮影申請費

日本から来る撮影隊が最も見逃しがちなのが、撮影申請のプロセスです。

文字通り、ロケーションや団体に対して「撮影をさせてください」という申請なのですが、このプロセスを見落としてしまうと、撮影スケジュールに影響を与えたり、最悪の場合、撮影も延期、キャンセルを余儀なくされる可能性がある重要なステップです。

海外、特にアメリカで撮影するには、公有地、私有地にかかわらず、必ずロケ先の組織、または管轄に連絡をとり、正式な撮影許可の申請を提出する必要があります。

撮影を受け入れる側では、撮影の規模や長さに対して予め設定していて、選ぶロケーションによっては撮影費だけでも、膨大な金額になることもあります。

例)ロサンゼルスのダウンタウンのマンションの一室を借りて撮影。半日、4時間の撮影で$5000のロケーション使用料が発生しました。

加えて、撮影許可の申請時に、ロケーションによって数十ドルから数百ドルの、返金不可の申請費が発生します。

ネタが決まらない時に、保険のために、とりあえず候補に上がっているロケーション全てに申請を出して欲しいというご相談をたまに受けますが、予期しない出費になってしまうことがありますので、要注意です。

3. 撮影保険費

こちらも、日本の撮影隊には存在があまり知られていない出費です。

撮影許可申請に伴い、アメリカといくつかの欧州諸国では、撮影保険が必要不可欠になります。

撮影保険は、撮影の申請をする際にロケーション側から要求されます。保険の所持、提出が契約の前提条件であることがほとんどなので、撮影準備を委託している現地のコーディネーターや現地制作会社が、申請プロセスの一環として処理してしまい、あまり話題に上がることがあまりありません。

しかし、保険を契約するために、もちろんお金がかかっており、通常、プロダクション全体の見積もりの4-5%前後の撮影保険を契約していますので、その分がお見積もりに乗ることを念頭に入れておきましょう。

4. ビザの申請費

撮影に限らず、合法的に諸外国に渡航するためには、必ずその目的に見合ったビザの取得が必要です。

例えば、日本からアメリカに渡航する場合、観光とビジネスミーティングに限り、ESTAというビザ免除のシステムがありますが、報道ではIビザ、学生ではF1ビザというように、細かくジャンル分けされており、正しいビザを取得して入国審査に備える必要があります。(外務省:ビザ

また、ビザの取得には、費用が発生することに加え、申請から取得までに通常数ヶ月かかりますので、海外撮影の可能性が浮上したタイミングで、一度プロセスについて調べてみるのが賢明かもしれませんね。

ビザに関しては、国際的に法律で定められている細かなルールも多くありますので、移民系の弁護士に相談するのが一番確実です。

ただ、いきなり弁護士に問い合わせるのは身構えちゃうという方は、現地コーディネーターに、これまでの撮影隊が何のビザを取得して、どれくらい前からプロセスを始めたかなどを問い合わせてみると、参考になるかもしれません。(パスポートの取得もお忘れなく!!)

5. 荷物の重量オーバー

飛行機に乗ったことがある方はご存知の通り、一回の渡航でチェックインできる荷物の量には制限があります。

撮影で渡航となりますと、自分の宿泊荷物に加えて、機材や、その周辺機器、また撮影に必要な資料やものなどを持ち込まなければいけないことがあります。

荷物の合計が1人の荷物の上限を上回ってしまうと、その分の追加料金、エクセスがかかってしまいます。

多くの場合、撮影のための渡航は複数人でしますので、みなさん荷物を振り分けて、なるべくエクセスが発生しないように工夫していますが、どうしても発生してしまうこともありますので、事前に荷物の重さを測るなどして、追加料金に備えましょう。

また、撮影する国に到着して、その後さらに場所を変えて撮影するために飛行機移動があるという場合もあります。国内便の荷物重量の上限は国際便よりも少ないので注意しましょう。

6. カルネ

海外撮影を行う際に、日本から機材を持ち込むと決定場合、カルネを取得する必要があります。

カルネとは、持ち込む機材が、日本からの輸入品ではなく、使用後に必ず日本に持って帰りますよという証明、つまり、荷物に対するパスポートのようなものです。

ビザと同じように、事前にカルネの申請、支払いをすることが必要になりますので、できるだけ時間に余裕を持ってプロセスを始めましょう。

7. ユニオン

アメリカの撮影業界には、ユニオンのプロダクションと、ノンユニオンのプロダクションが存在します。

ユニオンとは、撮影業界で働く人々を守るための労働組合で、ユニオンの仕事は、その労働組合に所属しているクルーや役者を雇ったプロダクションとなります。

そしてノンユニオンとは、それ以外のプロダクションのことです。

ユニオンは制作会社が撮影を行う際に厳しいルールを設けており、例えば、

  • 集合時間から6時間以内に全クルーに1時間の食事休憩を与えなければいけない
  • オーバータイム(10時間労働+2時間食事休憩以上の拘束)になる場合は、必ず残業代を払わなければいけない

その他多数あります。

ユニオンの仕事では、組合に所属しているクルーを雇わないといけないというルールがあり、比較的に質が高い技術者を見つけることができます。

その代わり、彼らが組合に所属している分、通常のプロダクションよりも割高となり、拘束時間の融通も効かなくなります。

多くのハリウッド映画はユニオンプロダクションで、高予算で大掛かりな撮影を可能としています。

逆に、一度ユニオンに所属してしまうと、ユニオン以外の仕事を受けてはいけないという規則があり、それが原因なのか、ユニオンに所属していないベテランも大勢います。

さて、どのような時にプロダクションをユニオンにしなければいけないかですが、多くの場合、日本からの撮影でユニオンを意識する必要はありません。

特に、規模の小さいテレビロケは日本からのクルーのみで撮影を行っても問題ありませんし、コマーシャルやミュージックビデオ、ましてや映画の撮影でも、組合に所属していないクルーを集めてノンユニオンのプロダクションを行うことが可能です。

ただし、ユニオンに所属している役者に出演してもらいたい(多くのハリウッドスターはユニオン所属)、どうしても演出をお願いしたい監督がユニオンに所属していた、ハリウッドの大手の撮影スタジオを借りて撮影がしたいなどという場合には、プロダクション全体をユニオンにして、ユニオンのルールにしたがって撮影を行うことになります。

8. コロナ対策

2020年から世界を混乱に陥れているコロナウイルスですが、世界中の映像業界もパンデミックに大きな影響を受けています。

海外渡航が難しく、ましてや海外で撮影なんて!という現状ではありますが、ZoomやLINEなどの通話アプリが発達した現代だからできるリモート撮影で、コロナ対策をしながら海外撮影を行うことは可能です。

現在アメリカでは、原則、コロナオフィサーの雇用、マスクや消毒液の入ったサニタリーキットの配布、事前のPCR検査や、長期の撮影の場合、期間中の定期的な検査に加え、撮影機材やロケーションの消毒など、様々な対策を行いながら撮影を行う必要があり、そういった面に対する出費は免れないでしょう。

ワクチンの接種がすすんできてはいるものの、感染者数は依然一進一退の状況で、上記のような対策がいつまで必要になるかはなかなか予測がつきません。

対策の厳密度は、撮影の規模などによって変わることがありますので、現状予定している日程や規模に対する必要な措置に関して、現地コーディネーターと詳しく打ち合わせをすることをおすすめ致します。

9. おまけ・セレブリティーの出演

アメリカはハリウッドスターや超有名スポーツ選手の宝庫です。

そんな、世界の著名人やセレブリティーを番組に出演させたいという問い合わせは少なくはありません。

しかし、彼らを出演させるのには意外とお金がかかります。

実名やプログラム名は明かせませんが、以前こんな例がありました。

アメリカの某有名元スポーツ選手に出演の交渉を持ちかけたところ、現役時代に活躍したスポーツを日本で一度再現してもらうという内容だけで、★★★万ドルという金額を提示されました。これに加えてその選手の来日のため、マネージャーと選手の二人分の旅費、飛行機は最低でもビジネスクラス、日本での宿泊にはそれぞれスイートレベルの部屋を用意、到着した日は撮影無し、撮影時間まで細かく制限という条件まで、また、招くだけでなく日本の選手と対決となると、別途請求など、トータルにするとかなりの金額になったため、渋々出演のお願いを断念するということがありました。

ですので、著名人を出演させたい!と考えている方は、ある程度覚悟を決めた方が良いかもしれませんね。

10. まとめ

このページでは、海外撮影をする際に発生する特殊な費用についてまとめました。見落としていた、思ったより多かったなどという項目はありましたでしょうか。

海外撮影は通常の撮影以上にお金との戦いになりますから、事前に心とお財布の準備をして挑みましょう。


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