撮影中のカメラのビューファー

コロナ禍での海外リモート撮影

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コロナの脅威がなかなか消えず、海外に渡航することが大変難しくなっていますね。パンデミック初期では、1日も早くいつもの日常が戻るように、世界中が自粛モードに入りました。

しかしあれから一年半近くが経つ今、撮影業界はそろそろ海外で撮影がしたいとうずうずしているのではないでしょうか。

最近では、そんな悩みを解決するために、通常の撮影に代わり「リモート撮影」が増え、最新の撮影スタイルとして確立され始めました。

コロナウイルスによるロックダウンでで注目を浴びたスタイルですが、実は以前からテレビ業界、特にニュースやスポーツの報道では頻繁に行われきた撮影スタイルであり、海外撮影の一つの理想的な形なのです。

この記事では、「リモート撮影」に関してを詳しく解説し、具体的にどういった方法で行われるかをご紹介します。

1. リモート撮影とは

リモート撮影とは、文字通り、遠隔で撮影をするとこです。

簡単に言えば、撮影・音声技術、照明や役者など必要最低限の人員のみが現場に行き、プロデューサー、ディレクター、エイジェンシーなどはzoomなどのビデオチャットアプリを使用して遠隔で撮影に参加する撮影形式です。

撮った映像はリモートで参加しているクルーも見られるようにセットアップすることで、リモート参加の監督やプロデューサーなどがそれを確認し、現場全体に指示を出すことが容易にできます。

ハイボルテージも、2020年の後半からこれまでに複数のリモート撮影を行っており、コマーシャル、プロモーションビデオ、モーションキャプチャー、料理番組、と、どんなジャンルの撮影でも、進行に支障なく撮影を遂行することができました。米国内のアメリカプロダクションでも、リモート撮影の手法が取り入れられ、今ではこの方法が徐々にスタンダードにすらなりつつあります。

リモート撮影という言葉は今までにあまり聞かなかった言葉なので、新しくて信頼できるか分からないように感じるかもしれませんが、海外撮影というものを俯瞰で見れば、実は海外撮影の半分は既にリモートなのです。

2. リモート海外撮影の流れ

リモート海外撮影と書きましたが、これは国内での撮影であっても、変わらず応用できます。では早速見ていきましょう!

通常の海外ロケと同様に、リモートで海外撮影をする場合のステップは大きく分けて、

  1. 打ち合わせ
  2. リサーチ
  3. 撮影準備
  4. 撮影
  5. 納品

の5つに分かれています。

1.〜3.の準備段階は、実はコロナ以前の海外撮影でも、撮影準備に関しては全てリモートで行われてきました。

海外撮影のお問い合わせを受け、企画・撮影内容の打ち合わせ、プロダクションスケジュールの作成、撮影許可申請の手続き、出演者交渉、クルーや機材集めなど撮影を行う為に必要な準備全般を行い、必要であればロケハンにいきます。

これらの作業は、EメールやLINE、ビデオチャットアプリなどを使用してクライアントと連携をとりながら、全てを現地コーディネーターが遠隔で代行します。

2.1. リモートで撮影

通常の海外撮影とリモート海外撮影で最も違うのが実際の撮影現場です。

先ほども述べたように、現場に集まる人数を必要最低限に抑えるために、現場には実際に機材を触る人とカメラに写る人しかいません。

その他の監督やプロデューサー、エイジェンシーなどといったクルーは、全員何かしらのオンラインプラットフォームで現場とつながっている状態になります。

ですので、監督は、そのプラットフォーム上で撮影現場の様子や撮影された映像をチェックし、これまた遠隔で指示やディレクションについてコミュニケートしていただく必要があります。

しかし、リモート撮影と聞いて、中継のような大掛かりで複雑な回線図を思い浮かべる必要はありません。インターネットがものすごく普及した現代社会、実はとっても簡単に実践できてしまいます。そして、その方法も一つではなく、プロダクションの規模や必要性に一番見合ったリモートスタイルが選べます。

2.1.1 最もお手軽・スマホでリモート撮影

読んで字の通り、日本と現場をスマホのビデオチャットアプリでつなげて撮影をします。

LINE通話やzoomなどを使用して、現場にいる現地コーディネーターが必要に応じてカメラの画角やプレイバックを携帯カメラでリモートで参加している監督に見せる方法です。リモート参加しているみなさんは、もちろんパソコンやタブレットなど、使いやすいデバイスから参加できます。

メリット
  • 撮影している様子をスマートフォンなど手持ちのデバイスで確認できるので、いつでもどこでも繋がることが可能です。
  • LINEなどのビデオ電話アプリを使用するので、特別な装備の必要がなく、気軽に撮影に参加することができます。
  • リモート用のセットアップがほぼ必要ないので、撮影スケジュールを圧迫しません。
デメリット
  • もしリモートで参加している監督やプロデューサーもスマホを使用している場合、画面が小さかったり、同じ画面内で他の作業、操作ができなかったりと、確認作業に時間がかか理ます。
  • 現地スタッフが手持ちでプレイバック画面などを映すので、若干の見辛さは避けられません。
  • 同じく、現地スタッフの手持ちになりますので、撮影されている映像をリアルタイムでずっとお届けするのは難しいです。

スマートフォンの登場は、インターネットの普及に一役も二役も勝っていると思いますが、手軽なリモート撮影にも、今後欠かせない存在になってくるのでしょう。しかし、あまりにも手軽が故に、複雑で大掛かりな撮影には向いていないように思えます。

逆に、必要な画が比較的単純明快で、監督確認がそれほど必要がないようなプロダクション、または、ロケーション移動が多い撮影などには、お財布にも優しく、うってつけの方法ではないです。

また、リモートで参加する側から見ても、普段電話をする感覚で撮影現場を覗けるので、非常に難易度の低い方法です。

2.1.2. カメラの映像をパソコンに取り入れる方法

この方法では、カメラで写している映像をそのままパソコンに取り入れて、その映像をZoomやLINE通話などでリモートで撮影に参加しているクルーに見せる方法です。

カメラの映像は、ストリーミング用のスイッチャーなどを使用して取り入れます。

メリット
  • スマホを使用する方法と同様、一般的に使用されているビデオチャットアプリを使用するので、撮影のために特別に何かの設備を追加したりする必要がありません。
  • カメラに写っているものと同じ映像が常にフィードされるので、細かい指示出しが可能です。
デメリット
  • カメラからの映像には若干のラグがあり、ネットの状況にや使用するアプリによっては、映像がカクカクになったり、ボケたりする可能性があります。
  • スイッチャーの性質上、ビデオチャット上では一度に一つの映像しか送れません。
  • 対策として、ストリーミング用のアプリをかませると、2画面同時に送ることも可能ですが、アプリの性質上、1分前後のラグが発生します。

この方法では、送れる映像に限りはあるものの、小規模から中規模の撮影で、カメラが同時に複数台回らないようなプロダクションには最適です。

2.1.3. プレイバック専用機材を使用する方法

Q Takeなどといったプレイバック用の機材は、遠隔でもプレイバックを見てもらえるような機能が搭載されています。

リモート参加している側が、指定の無料プレイバックアプリをダウンロードするだけで、まるで現場でモニターを見ているような自由度で撮影に参加できます。

メリット
  • 大型スタジオなども使用するされている安心安全のプラットフォームです。
  • Qtake独自の機密性の高いクラウド上に、撮影された映像がリアルタイムでアップロードされ、アクセス権の与えられた参加者のみが、世界中のどこからでもデータにアクセスすることが可能です。
  • 現場のオペレーターにその場でカラコレの仮あてをしてもらったり、リアルタイムでグリーンスクリーンに背景が入った映像を確認することができたり、非常に細かいチェックまで可能です。
  • パソコン、タブレット、スマホでも手軽に映像を確認することができます。
デメリット
  • 機材の使用料が高い。
  • 安定したインターネットが必須です。現場でネット接続が不安定な環境である場合、接続を安定させる機材を追加で使用する必要があります。
  • リモート参加する側が使用するプレイバックソフトがAppleのみ対応、特定のOS以降のみ対応などと、互換性に制限があることがあります。
  • 現場での操作や回線が複雑かつ専門的な為、円滑に進めるためには専門のオペレーターを雇う必要があります。
  • このアプリを使ってコミュニケーションをとることも可能なのですが、リモート参加者と機材オペレーターの一対一の会話のため、カメラマンや他の現地スタッフと直接コミュニケーションを取りたい場合、他の通話手段も同時に繋げる必要があります。

この方法はある程度高額かつ複雑ではありますが、リモートで参加している側は、使用デバイスの互換性さえクリアできれば、他の二つの方法と同じくらい気軽に現場と繋がることが可能な上に、レコードされた映像が操作できたりとかなり自由度が上がります。

大掛かりな撮影で、プレイバックを細かく確認する必要があるプロダクションの場合、この方法が一番おすすめです。

2.2. リモート撮影の現場でも欠かせないコロナ対策

アメリカではワクチンの摂取も進み、今では毎日数多くの撮影が行われていますが、撮影が再開されるにあたり新しいルールが定められました。

その1つが、COVID-19 SAFTY COMPLIANCE OFFICER、コロナ・オフィサー(コロナ管理監査係)の雇用です。

コロナ・オフィサー(コロナ管理監査係)の主な役職は、撮影期間中の全てのクルーやキャストの衛生安全の管理を行うことです。

クルーの体調を監督管理、ソーシャルディスタンスを厳守、機材・ロケ場所など関わるもの全ての消毒の確認、防護装備・マスク・手袋などPPEを配布、装着させるなど、安心安全に撮影ができる環境を作ります。

ロケハン(ロケーションスカウト)から、撮影現場まで、クルーが行く場所には全て同行し、安全に作業が行えるように努めます。

また、撮影場所の換気消毒・コロナ対策に沿った導線・スペースの確保などの対策が出来ない場合には、彼らが撮影NGを出す場合さえあります。

コロナオフィサーについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェック!

現段階では、どんな規模の撮影であっても、現場に必ず1人コロナ・オフィサーを雇用しなければいけません。

また、まだワクチンを受けていない全クルーに対して、撮影前にプロダクション負担でPCRテストを受けさせる必要があり、テスト結果が陽性であった場合は、現場にこさせてはいけないというルールがあります。

ただし、雇用前にクルーにワクチン摂取の有無を質問をすることは禁止されているので、予めワクチン摂取済みのクルーだけを集めることはできません。

アメリカでは、このようにして撮影に関わる全てのクルーの健康・安全を守る努力をしています。

2.3. 撮影後のデーターの送信

通常の撮影でしたら、みなさんが大事な素材が入ったハードドライブを持ち帰り、現地プロダクション側がバックアップのハードドライブを一つ保管しておきます。

リモート撮影の場合でも、バックアップドライブの存在は変わりませんが、実際の素材の受け渡しは、HD(ハードドライブ)の郵送と共にデータの伝送を行うことが多いです。

2種類の方法でお届けすることで、片方に何かあったときにも、確実にお届けするためです。

3. まとめ

この記事では、リモートで行う海外撮影について紹介させていただきました。

気軽に出かけることも難しい時勢ですが、そんな状況でも、遠隔で人と繋がることで、企画を成立させることは可能です。

実際に現場に立ち会って指示を出す撮影とはコミュニケーションの方法は異なりますが、こんな時だからこそ、現代のテクノロジーを駆使したコミュニケーションで意思疎通をはかり、海外にいるチームとのプロジェクトに挑戦することができるのではないでしょうか。

さらに挑戦したプロジェクトを通して「信頼できるチームを海外に持つ」ことができれば、リモート撮影であろうと、海外へ出向いての撮影であろうと、今後の海外プロジェクトも怖いもの無しで進めて行けるはずです。

リモート撮影についてもっと深く知りたい方は、ぜひ私たちにご連絡ください。


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