昨年末に販売が開始されたSony FX6がついに届きました!
FSシリーズの後継機となるFXシリーズ。
Venice、FX9に続く最新のカメラで、ジンバルにも乗せることができる軽量ボディー、裏面照射型の有効約1026万画素、DCI 4Kにも対応、S-Cinetoneをデフォルトルックとして搭載しているなど、注目すべき点は多々ある。
αとシネマラインの融合したカメラ。
電子式内蔵可変NDフィルターは映像をかじっている方なら一度は触ってみたいカメラではないでしょうか?
シネマカメラながらも機動力が高いのはドキュメンタリーなどにはうってつけです。
S Cine Toneは自然なスキントーンを捉えつつもシネマティックな映像が撮れ、撮影後のクライアントとのイメージの違いなどを極力少なくできるなど、数えればキリがないこのカメラ。
今年の3月初めにオーダーを入れ、約70日後にやっと届きました。半年間使用して気づいた良い点、悪い点含め、ご紹介します。
基本的なスペックは
- Full Frame / Super 35にて撮影可能
- Shutter Speed/ Rolling Shutter の選択が可能
- 4K UHD 120p、FHD 最大240p、4K RAW(Apple ProRes)
- XAVC L & I 4:2:2 10ビット
- SDIにより16ビットRaw 出力
- S-Log3、Cine EIモードだと15+ Stops Dynamic Range を実現
- ベースISO 800/ 高感度ISO 12,800/ 最大ISO409,600
などなど、目白押しとなっています。それでは詳しく中を見ていきましょう。
1. 驚きの軽量化ボディー!〜メリットとデメリット〜
1.1 軽量化のメリット
ワクワクする気持ちを抑え箱を開けると
とてもシンプルな中身になっています。
これがFX6を開梱した中身全てです。
- FX6ボディー
- トップハンドル
- LCDモニター&カバー
- サイドハンドル
- BPU 35バッテリー&チャージャー
- Catalyst と本体マニュアル
思った以上に少ないというのが第一印象です。特別なアイテムはありませんが、一つおかしな点が…このボディーの軽さと小ささです。
サイズは15.3cm x 11.6cm x 11.4cmとコンパクトで、たったの890gと持った瞬間にあまりの軽さに驚きます。
これはiPhone9との比較ですが、FX6がいかに小さいかが分かると思います。若干のプラスチック感がボディーに感じれるのは軽量化のデメリットではありますが、十分にしっかりとした作りで、シネマラインだなーと感じれるカメラです。
この軽さだからこそDJR RS2やZhiyun Crane 3Sなどのジンバルに乗せることができ、大きなメリットなっています。最近だとSony から発売されたAirpeak S1はa ラインをドローンに乗せ撮影できるものですが、今後はソニーシネマライン対応のドローンが登場も夢ではないかもしれません。
いずれにせよ軽量化によりジンバル、ドローンなど使用できる場面が増えてきたのは大きなメリットです。
1.2 軽量化のデメリット
軽量化は確かに素晴らしく、大きなメリットではあります。しかし、メリットがあればデメリットもあります。
知っている方も多いと思いますが、FX6にはオーディオを収録するためのXLR(キャノン)がトップハンドルについていて、ボディーには無いんです。FS5の後継機であるにもかかわらず、ボディーにXLRがないのは残念なところ。残念ながら3.5mm ステレオミニジャックもないんです。
このカメラの数少ないデメリットの一つです。
そのため、ジンバルに乗せて音を同時収録(ボディーでの収録)するということはできないので、ブームなどで収録するなど別収録が必要です。
いくつかのレビューでは、カメラマイクの音質は良くないと指摘している方も見かけましたが、個人的にはマイクカメラとしてであれば、合格点なのではと思います。基本的に音は別収録するのがシネマカメラとしては普通なので、そこまでのスペックは必要ないかなというところです。
余談ですが、ドイツ製のこちらの製品「Tentacle Sync」を使ってのTCシンクを多くの方が推奨しています。
Tentacle Sync Track E はアメリカだとUSD $349.00 + 税で、Sync EのDual SetだとUSD $399.00 + 税で購入できます。日本での販売は分かりませんが、軽く調べたところTrack Eはおおよそ¥42,000(税別)で購入が可能なようです。ちょっと日本の方が高いイメージですね。
もし興味がある方は、Tentacle Syncが紹介しています。
これを使わないでSlateを入れるなどもできますが、TCでシンクした方が確実ではあるので是非使ってみたい機材です。
音のデメリットはあるものの、軽量化したボディーにより機動力は大幅にアップし、ドキュメンタリーにはまさにうってつけのカメラです。それ以外にもプロダクト撮影やCM、映画も撮影できるのでかなり万能なカメラとなっています。
2. カメラボディーの熱との関係
αシリーズを使っている方なら一度は悩まされたことがある「熱問題」。
元々、αシリーズは写真と動画を撮れるという事が利点であり、様々な機能がシネマカメラとは異なります。そのためカメラに籠る熱を効果的に排出できているとは言い難い構造になっています。もちろん長いαシリーズの技術の進歩で年々改善されてきている部分はありますが、やはり長時間の撮影にはあまり向いていないと思います。
しかしこのFX6、全く熱くならないんです。
ここがFX6のファン部分です。
今のところですが、景色を撮影した時、約3時間ほど回し続けていましたが全く熱くなりませんでした。
よくあるんですが、αで撮影した後のボディーはしっかりと熱を持ってしまっていオーバーヒートで熱が逃げるまで撮影できないなんてことも。しかしFX6はこの問題を解決してくれました。αシリーズを触った事がある人はよく分かるかと思います。
また、熱をこもらせないだけなら普通ですが、ファンの音も気になりません。メリットしかなくてデメリットは全くないですね。
3. LCDスクリーンとオートフォーカス
FX6にはFS7などと同じようにLCDスクリーンがセットでついてきます。
サイズは3.5 inch、Resolutionは1280 x 720とHDでないのが非常に残念。
フリップも可能で、モニター左側のボタンで操作やカスタマイズも可能。デフォルトではPeaking、Zebra、9のAssign となっており、ワンタッチで切り替えが可能です。
明るさも調整でき、フードもついて来ます。
とてもいいとは思いますが、 デメリットもあります。
αシリーズであるα7S IIIやFS3などにあるタッチフォーカス機能がない事です。フォーカスしたい対象物にたいしてモニターをタッチすると、フォーカスを送る事ができていましたが、FX6にはこの機能はついていません。
αシリーズよりもシネマカメラに寄せたためという事だと思いますが、可能であれば欲しかった機能です。いつかアップデートが来るのいいのですが…
フォーカスに関してですが、フェイストラッキングも対応しており少しびっくりしました。人間がフォーカス送るよりも正確な場合も…
フォーカスエリアは、wide, zone, and spotの3パターンです。
フォーカスの細かな設定はUserのFocusという項目で変更が可能です。フォーカスのスピードは1〜7まであり、1が1番遅く、7が1番早くフォーカスを合わせてくれます。そのほかにも細かくニーズに合わせて調整が可能です。
あともうちょっとモニターサイズが大きければ良いなと個人的に思います。
Sony FX6はオートフォーカスも非常に優れています。こちらオートフォーカスのサンプル動画です。
4. 電子式可変NDフィルター
今まではFX9、Veniceにしか搭載されていなかった内臓NDフィルター。
FX6にも搭載されました。
オート、マニュアルと選択でき、1/4 ~ 1/128と様々な現場で非常に役立ちます。
最近のカメラに多いですが、このNDフィルターも変更している際にフィルターが変わっていく様子は見えません。そのため暗い場所から明るい場所に移動するときなど、滑らかにNDが動作し、撮影をサポートしてくれます。
これはドキュメンタリーなどで非常に役立つので、早く撮影したいと思います。
このNDの利点はもう一つあり、フィルターをつけれる事です。
レンズに装着型のフィルター、マットボックスに入れるフィルターなどありますが、ボディー自体に可変NDフィルターが内蔵されているので、レンズ前、マットボックスと一つ選択肢が増えます。
こちらNDのサンプル動画です。
5. S-Cinetone、LogとCine EI
このFX6の注目ポイントであるS-CinetoneとCine EI。
ざっくりとものすごく短く説明すると、
1. S-Cinetone : ポスプロ作業でのカラコレなどが極力必要なく、カメラで撮影した映像をそのままワークフローに取り込みたいプロジェクトの場合におすすめ
2. Cine EI : ダイナミックレンジ、また、カラーグレーディングにて効果を発揮したいプロジェクトの場合におすすめ
となります。
FX6のデフォルトルックはRec709ではなくS-Cinetoneとなっています。
これって何って思う方もいるかと思います。
S-CinetoneとはCineAlta カメラのVenice開発を通して得られた知見をベースに作られ、人の肌を描写する際に使用されるミッドトーンの表現力アップ、また、色合いを全体的にソフトに、ハイライトの描写は被写体を美しく際立たせるようになっています。
欠点としてハイライトがロールオフしやすいという部分はありますが、撮影からダイレクトに映像を出す、ニュースなど時間と勝負な現場、ライブなど様々なワークフローに対応でき、多岐に渡り使用できます。
今までαシリーズを使用してきた人はPicture Profile (ピクチャープロファイル)の7や8といったLog 2やLog 3を選択、Color Correction → Color Gradingという方も多いのではないでしょうか?
今回のFX6にはCine EIという機能がLogのPicture Profileの代わりとして登場しました。
Cine EIはベースISO800、高感度のベースはISO12,800と暗部での撮影に非常に役立ちます。オフィシャルにはDual ISOと謳ってはいないのですが、ISO12,800に上げてもほとんどと言っていいほどノイズが気になりません。もし気になった方はこちらのテスト動画をどうぞ。
6. IBISがない
FX6には電子可変NDフィルターを内蔵させるために、αやFX3にはあるはずのIBIS (手振れ補正)がついていません。カメラだけで滑らかな映像が撮影できるというのがαやFX3の利点だった分、慣れていない方もいるかもしれません。ここにも手ブレ機能がないシネマカメラっぽさがありますね。
もしスタビライズさせたい場合、ソニー製品で撮影したを再生できるソフト「Catalyst」にて撮影後に調整する事ができます。
IBISが無い代わりに、どのような動きをしたのかといった情報が撮影したデータを映像と共に記録されているため、専用ソフトを使ってスタビライズを行います。
一つ注意しなければいけないポイントとしては、スタビライズさせるため多少クロップされるので、少しだけ広めに撮影することを気に留めておいてください。もしくはかけすぎないかのどちらかです。
クロップはどこまでスタビライズするかによって変動します。
手振れ補正がないからブレブレになる?と思うかもしれませんが、FX6にレンズ、モニター、マットボックスなどをつけるとそれなりの重さとなるので、実はそこまでぶれません。
逆に重量がしっかりとあるので、ハンドヘルドで撮影してもカメラの重さによりシネマティックなハンドヘルドの映像が撮影できます。
7. バッテリーとメディア
FX6の推奨するバッテリーとメディアが非常に高額なんです。
これに関しては、aシリーズからアップグレードした方ならデメリットの方が大きい印象を受けているのではないでしょうか?
従来のFSシリーズではBP-U30, 60, 90などが使用され、様々なブランドの製品が簡単に手に入ります。
しかし、現在推奨されているバッテリーはSony BP-U 35, 70, 100です。
BP-U35はUSD $159.99 + 税、BP-U70だとUSD $319.99 + 税、BP-U100になると一つのバッテリーでUSD $450 + 税です。
どのくらい持つのかですが、BP-U35はおおよそ2時間程度持ちます。
弊社では追加のバッテリーとしてIDX SB-U98を購入しました。
理由としてはD-Tapが2箇所、USBポートが一つあるので、モニターやワイヤレスフォローフォーカスなどへの電源供給がV マウントやゴールドマウント無しで使用できるからでした。IDX SB-U98からカメラ本体以外にDtap経由で電源を供給するとバッテリーの減りは変動してしまいますが、ボディーだけであれば約6時間ほど持ちます。
Vマウントなどの方が使い勝手など良く広く使われていますが、「ワンオペを想定&できるだけコンパクトでありながら高スペック」と考えるとこうなりました。
バッテリーはカメラの心臓でもあるので、多少高いのはしょうがないかと思いますが、メディアがαを使用していた頃から想定すると非常に高額になりました。
読み込み&書き出しが非常に早く、4Kなどの高スペックで撮影した際には確かに信頼がおけ、とても重宝するCFexpress Type Aですが、一枚160GBでUSD $398.00 + 税となっています。
個人的にはもうちょっと安ければとも思う反面、シネマカメラと考えると安い方なので…とも思ってしまいます。
8. 終わり
まだまだたくさんありますが、今日はここまで。メリット、デメリットあり、一長一短ではありますが、確かに素晴らしいカメラであることは間違い無いです。
まだまだしっかりと使用できていないのでFX6を様々な場所で使用し、もっと理解を深めていく必要があると思います。
映画からコマーシャル、ドキュメンタリーまでオールマイティーに使えるこのFX6。
もし手に取る事があれば是非、お試しください。
弊社でもコンテンツを出していくので、もしよろしければチェックしてみてくださいね。
L.A.拠点の映像制作会社、High Voltage Entertainment, Inc.(略してハイボル)。スタッフが日々交わす会話のキーワードから、「撮影に関する豆知識」「絶景撮影スポット」「必見の食や旅の情報」など、現地のリアルでフレッシュな情報をアレもコレもギュッと。