一般的にも、また、撮影業界でも広く使用されているオンラインストレージサービスであるDropbox。10月21日に発表された新機能「Replay (リプレイ)」のベータ版が公開されました。撮影した内容をチームやクライアントとの確認に非常に使いやすくなりました。
今回はこの新機能「Replay]の撮影で使える方法をお伝えします。
1. Dropboxって何?
Dropboxとはオンラインストレージのサービスであり、映像のやりとりやファイルの共有など幅広く使用されています。Google DriveやiCloudに類似して、無料版と有料版があり、無料版は2GBまでファイルを保存可能。有料版は複数のプランがあり、2TBまでクラウド上にファイルの保存、転送などが可能です。映像系の人は有料版を使っている人がほぼ100%だと思います。プランごとに使用できる人数など決まっていたり、セキュリティー機能がついたり、コンテンツリカバリー機能など有料版の方が利点も多いです。
オンラインにファイルを保存しているので、手元にあるファイルを間違って消去してしまっても大丈夫。オンライン上のファイルを消去しなければ、アカウントさえあればいつでもどこでもファイルにアクセスができます。
便利な点は他にもあり、スマートフォンのアプリ上からもDropboxにアクセスが可能なため、大切な写真などをアップロードなども可能です。
メールやテキストで送れないような大きなファイルも好きな時に相手に送ることもできるなど、無料版でも十分に活用できます。ファイルのアクセス権も操作可能なので、単純に閲覧の権限だけを相手に与えることもできますし、編集までできる権限を与えることができるなど、ニーズに合わせて調整が簡単にできます。もし使ったことがない方は是非一度使ってみてください。
2. Dropboxの新機能「Replay」とは?
さて、Dropboxの新機能「Replay」についてご説明したいと思います。
「この新機能何ができるの?」「使い方は?」など一体なんだろうと思う方が多いかと思います。ネットで調べても何か便利そうだけど使い方をしっかりと書いてある記事などまだ多くありません。このブログを説明書程度に使ってもらえるとすごく嬉しいです。
Replay 画像
この「Replay」とはDropboxのクラウド上にアップロードしているファイル、もしくは「Replay」の操作画面から直接ファイルをアップロード、メンバー全員に共有でき、なおかつその動画に直接フィードバックを書き込めることができるという利点があります。一コマ単位で作業できるので、クライアントやチームからの修正内容の対応が一ヶ所ででき、動画を使った共同作業がスピードアップします。アップロードする人はアカウントを所有している必要がありますが、コメントを残すだけの人はアカウントを持っている必要がないので、誰でもアクセスが可能です。これも利点の一つですね。
メンバー全員が同じものを見て、同じ画面内で各メンバーの書き込んだ内容が一目でわかるのがこの「Replay」の特徴です。それではこれをどうやって撮影、ポスプロで使うのかを見ていきましょう。
i. Replayの使い方
まずどこからこの「Replay」にアクセスしたら良いのかですが、最初のメニュー画面左上、Dropboxのロゴ左、メニュー画面、赤丸の部分で囲んでいる部分をクリックします。
ぱっと見はどこにも無いように見えます。「さらに表示」が見えたら下にスクロールすると「Capture」「Replay」「App Center」の三項目が出てくるので、「Replay」をクリックすると、Replayの操作画面へ飛びます。
まずは画面右上、Add Videoから動画をアップロードします。(既にDropbox内に動画のアップロードが完了している場合、Add from Dropboxからアップロードしたい動画を選択してください)
3. ポスプロでの使い方
Replayを使うメリットとして、一回のアップロードでチーム全員と共有、また、直接修正を希望する部分にメモを残すことができます。これにより、チーム全体でどの人がどのような点を改善してほしいのかが一目で分かります。
映像業界にいる方なら分かると思いますが、気になる点があった場合、毎回正確なTC(タイムコード)を抜き出しメールや電話で伝える必要がありました。これでも作業はできますが、言葉だけではうまく伝えられない、また、チーム内での共通したイメージのすり合わせに時間がかかることが多くありました。
i. チームとの共有
チーム内、特に遠隔での映像共有にはこのReplayが非常に役に立ちます。レビューを行った後、指摘対象をフレーム単位で正確に把握することができます。
a. コメント機能
フィードバックのチェックにはコメント部分の「Unresolved (未解決)」「Resoved (解決済み)」「All (全てを表示)」の三つが選択できます。誰がどこでコメントをしたのかが一覧になっているため、全てのコメントが一目でわかるようなっています。各コメントをクリックすることで、そのコメント部分に転送され、映像を見ながらどこを修正したら良いのかが簡単に、チーム全体で把握できるのです。
最初のコメントは全て「Unresolved」に保存され、作業が終わったものから「Resolved」に移すことができます。各コメントにカーソルを載せるとコメント右上に「◯」のマークが表示されます。
この◯部分をクリックすると、コメントが自動的に解決ずみの「Resolved」に移行されます。これによりどの部分の修正が終わっているのかどうかがチーム全体で把握できるようになっています。今までのプロダクションであれば、チーム内でのレビューは全員で一つの画面の映像を見て、気になる点をその都度伝える、もしくは映像自体をもらった後、修正部分のTCを抜き出してコメントをする必要があったので、チーム全体で同時に修正部分/ 修正済みの部分などが一度に確認することはできませんでした。この新しい機能Replayを使うと好きな時にプレビューやコメントができるため、オンラインが主流になった今、各メンバーのスケジュールで作業できるようになりました。
このように全てのメンバーが好きな時に現在の進行状況を確認できます。
このReplayでは一つの動画確認画面で、アップロードしたバージョン1、2、3の全てが簡単に変更、確認できます。
映像業界では一つ目の編集を1st Draft (ファーストドラフト)、修正点を改善した二つ目を2nd Draft(セカンドドラフト)、3rd Draft (サードドラフト)、4th Draft、などと言います。このReplayは各ドラフト毎に作業できるため、全てのドラフトでのコメントが残った状態で作業できます。これにより「Aさんが1st Draftで変更をお願いした◯◯◯はどうなっていますか?」「Bさんが〇〇◯した部分」「Cさんが」など全員の指摘した修正点を逃すことなくいつでも確認、修正が一つの動画で可能です。
b. ペン機能
コメントするという点では同じですが、このペン機能は映像内の修正したい部分に直接ペンで書くかのようにマークをコメント付きで残すことができます。カーソルを動画画面上に持ってくるとカーソルの形が矢印からペンに切り替わります。これで気になる部分にまるでペンで書き込むかのように直感的に書き込むことができます。また、コメント機能と同じで、ペンで書き込んんだ部分のTCを自動で読み込み、そこに直接コメントできます。
画像のように丸を描き、右側には書き込んだTCに合わせてコメントが表示されます。後の作業はコメント機能と同じなので、戸惑うことなく簡単に作業ができます。
ii. クライアントとの共有
チームとの共有と同じで、クライアントに映像リンクを送り、変更してほしい部分などの書き込みが可能です。この書き込みの便利な点は、Dropboxのアカウントを持っていなくとも使用できる点です。また、このReplayに招待する人数に制限はなく、クライアントが10人いたとしても、100人いたとしても全員との共有が可能です。メジャーなクライアントの場合、クリエイティブディレクター、プロデューサー、プロダクションマネージャーなど数多くの人々が携わることになります。こういった大きなプロジェクトの場合に、全員が一つの動画でプレビューができるというのはプロ仕様の高価なQ take、Frame ioなどを利用するしかありませんでした。このDropbox新機能Replayによって、今まで手が出せなかったプロダクションや、フリーランサーがより使いやすくなったのです。クライアントに送る際、動画のアクセス権に関して二つの選択が可能です。
A. Review and comment (閲覧権+コメント権)
このリンクを持っている人は動画の閲覧、また、コメントが可能です。コメントする際は、コメント者の名前を登録するだけで可能です。このコメントをしたい場合、Dropboxのアカウントを持っている必要は無いので、クライアントでも簡単に修正点の書き込みなど自由に行えます。
B. View-only link (閲覧権のみ)
このリンクを持っている人は動画の閲覧のみ可能です。コメントの権限を持っていないので閲覧のみできるようになっています。素早いクライアントチェックなどに使用できます。また、このView-only linkの優れている点は、閲覧権を与えたいバージョンを指定できる点です。
例えば、チーム内での作業が終了し、クライアントに最終確認をしてもらいたい場合があるとします。その場合、クライアントチェックまでに様々なバージョンが出来上がっており、V1、V2、V3、V4などがあり、クライアントに全てを見せる必要はありません。最終のチェック用だけ閲覧して頂ければ良いので、この場合だとV4を選択し、リンクをコピー。これをクライアントに送ることで、簡単に閲覧チェックを行うことができます。
4. 編集ソフトとプラグイン
現在このReplayはベータ版であり、今後の展開が期待されています。ベータ版のため、現時点(12/10/2021)ではプラグインからのコメント書き込みは英語のみ可能となっています。将来的には日本語や他言語でも対応できるようになるかもしれません。プラグインにより毎度毎度ドロップボックスを開かなくともプラグインのダウンロードで編集ソフト上での修正部分の確認、アップロードが可能になりました。ここではその具体例を紹介します。
i. Premiere Pro
Premiere Pro、Final Cut、Avidなどなど、様々な編集ソフトがありますがこのPremiere Proはメジャーなソフトの一つで世界中の人が使用しています。メリットとしてはAdobe製品との兌換性が非常に良いため、様々なソフトと連携して作業ができる点です。
プラグインはメニュー画面 → Window → Replayを選択すると画面が表示されます。基本的にDropboxの画面を見ているのと同じような感覚で使用できます。まだベータ版のためなのか、Replay上で見ることができ右側に表示されるはずのコメント一覧が表示されないという点だけがデメリットです。
プラグインはAdobeのCreative Cloud からダウンロードが可能です。もし見つけれない方はこちらのリンクからダウンロード可能です。
弊社では様々な形態のメディアに対応していますので、ご興味のある方はこちらへ。
ii. DaVinci Resolve
DaVinci Resolve でのReplayの作業はプラグインを入れる必要はありません。PreferenceよりDropboxのアカウントとリンクさせるだけで、動画のアップロードが簡単に行えます。
まずはアカウントのリンク作業です。
その後、アップロードを行います。アップロードの際、必ず「Upload directly to Dropbox」を選択してください。これにより、指定のDropboxフォルダーに動画をアップロードすることが可能です。
リンクし、アップロードが完了したら、次は編集作業する人にシェアします。この際、シェアの権限は必ずReview and commentにしてください。もしこれを選ばなかった場合、のちの作業でタイムラインのコメントに対して作業ができなくなります。
リンクよりDavinciに再度アクセスすると、タイムライン上にコメントとマークが表示され、通常のDropbox Replayを見ているのと同じような作業ができます。もちろんコメントに対してResolved(解決済み)のマークをつけることができます。また、レビューした人が画面上にペンで丸など印をつけたものなど全く同じように操作できます。
DaVinci ResolveとDropboxの良い点はタイムライン上にコメントが表示される点です。現在のPremiere Pro pluginには専用のReplay plugin画面を表示させる必要がありました。しかし、DaVinci Resolveではタイムライン上に直接コメントされたTCと共にマークが表示されます。このマークをクリックすることで各コメントに飛ぶことができ、簡単に作業が行えます。
興味のある方はこちらにチュートリアルを貼っておきます。日本語ではないですがDaVinciを使う方であれば問題なく理解できる内容です。
弊社ではポスプロも多く行っています。カラコレ&グレーディングも行っていますので、興味のある方はこちらより。
5. まとめ
少し前はある限定されたウェブサイト、アプリケーションからのみ行うことができたファイル共有+コメント機能は現在様々なプラットフォームで対応が可能になってきました。このDropbox Replayの登場で、さらに様々なアプリケーションとの連携、また、多くのプラットフォームでも同じような対応が求められてくると思います。
これから改善されていくベータ版なので、今後のアップデートに目が離せません。アップデートがあり次第この記事は定期的に更新していきますので気になる方は是非、ブックマーク登録をお願いします。
今後もこちらよりポスプロ、製作に関しての情報を投稿していきますので、お見逃しなく。
L.A.拠点の映像制作会社、High Voltage Entertainment, Inc.(略してハイボル)。スタッフが日々交わす会話のキーワードから、「撮影に関する豆知識」「絶景撮影スポット」「必見の食や旅の情報」など、現地のリアルでフレッシュな情報をアレもコレもギュッと。